面接必須化より怖い、年内入試の本当の変化

「9月には出願開始となる大学もあるのに、5月下旬に発表するってどういうこと?」
そう思った方も多いのではないでしょうか。
大学入試の総合型選抜と学校推薦型選抜、いわゆる年内入試に、今年度から面接が必ず課されることになりました。学校現場からも、塾や予備校からも、受験生や保護者からも、あらゆる方向から「そんなの許されるの?」という声が聞こえてきそうです。
通常、入試の選抜方法に変更が生じるときは、数年前に予告するのがならわしです。受験準備に影響を及ぼすような変更については、文部科学省の実施要項等でも“2年程度前”の予告・公表が求められています。それが今回は出願3か月前にいきなり発表。それだけ緊急の対応が必要だったということの裏返しなのでしょうが、影響を受ける側にはたまったものではありません。
※面接必須化には例外・経過措置があります。直ちに導入が難しい場合は2年間の猶予があり、非公募型の学校推薦型選抜も大学の実情に応じて判断できるとされています。詳細は各大学から公表される募集要項で確認するようにしてください。
なぜ、面接必須化に踏み切ったのか
なぜこんなことになったのでしょう。少し背景をたどってみます。
そもそも年内入試が拡大した背景には、大学側と家庭側の思惑の一致があります。大学は少子化が進むなかで少しでも早く入学者を確保したい。家庭の側も、激しい受験競争を避けたい、早く決まれば受験費用が抑えられる、そういう思いがあります。双方の利害が噛み合った結果、年内入試の割合は年々増え続け、いまや全体で5割強、私立大学に限れば6割以上が年内入試での入学者になっています。
問題はここからです。
基礎学力が十分に育っていない状態で大学に入学し、授業についていけなくなる学生が中堅以下の大学で増えてきました。それに対し、ここ2〜3年、一部の大学が対策に乗り出しています。年内入試の体裁を取りながら、実質的には一般型選抜に極めて近い入試方式を導入したのです。実はこうした入試形態は関西の大学では前々から行われていたのですが、首都圏においても東洋大学や大東文化大学といった有名大学が大々的に導入したことによって社会問題化しつつありました。
これの、なにが問題なのかというと。
一般型選抜の場合、個別の学力試験は年明け2月以降に実施する、というルールがあります。それを「うちは一般型選抜ではなく、“基礎学力型年内入試”だから」という名目でくぐり抜け、しかも実態はテストの点数だけで合否が決まってしまうようなやり方でした。「総合型」や「学校推薦型」という看板を掲げながら、やっていることは一般型選抜とほぼ同じ。これでは文科省が怒るのも無理はありません。
そこで飛び出したのが、今回の面接必須化という措置です。総合型や学校推薦型なのだから、ちゃんと受験生を多面的に評価しなさいよ、という、原則を守らせるための怒りの制裁!
中国には、「上に政策あれば、下に対策あり」という言葉があります。
お上がルールを決めても、そのルールの網の目をかいくぐって人々は出し抜く、それが生き延びる知恵だ、そういう考え方です。まさにそれを地でいくような展開が、日本の大学入試で起きていたのです。本格化する少子化の波を前に、きれいごとばかり言ってもいられなくなった大学が、ルールの隙を突いてでも生き残ろうとする。そんな様子を目の当たりにして、正直なところ、少し寂しい気持ちにもなります。
多面的評価の理想と、大学現場の限界
年内入試における面接必須化という方針。これをどう評価したらいいのでしょう。
私は、基本的に賛成の立場です。
現行の学習指導要領のなかでは、「学びに向かう力」も含めて学力であると定義されています。主体性や協働性も、広義の学力であるという解釈です。高校までの教育のなかでそのような理念を掲げておきながら、大学入試ではペーパーテストの結果だけで合否を決めるとなっては整合性がとれません。
もちろん、ペーパーテストのほうが公平だという意見はわかります。アクティブラーニング的な学び方が苦手な子でも、平等に認知能力を評価することができるからです。昔ながらの受験方式に立ち返るべきだという考え方は、この点において一定の説得力を持ちます。
ただ、ペーパーテストの点数だけで、大学以降の学びや実社会で価値を出せる人材を見極められるか、と問われると、そこには限界も感じます。昨今、大学の授業でもグループワークやプレゼンテーションが増えてきている状況を考えれば、そうした学び方に対応できる能力も入試で評価することは、方向性として正しいはずです。筆記も、面接も、できるだけ多くの材料を組み合わせて多面的に評価する。これが理想的なかたちだと私は考えます。
しかし現実問題として、それは簡単ではありません。日本の大学は入試業務にかけられるリソースが欧米に比べて圧倒的に少ないからです。アメリカやイギリスには入試を専門に扱う部門やプロフェッショナルが揃っている大学も少なくありませんが、日本ではまだまだ体制不十分で、教員が研究教育活動のかたわら入試業務にも駆り出されるのが実態です。そこにさらに面接制度を拡大するとなれば、評価の質をどう担保するのか、実施体制をどう整えるのかという問題は避けて通れません。

今年度以降の大学入試はどう変わっていくのか
といった前提を踏まえまして、今年度以降の大学入試がどのように変わっていくのか、超個人的な予想を書いていきたいと思います。
結論から言うと、今年からむこう3〜5年、年内入試の難易度は上昇し、競争は激化していくのではないかと予想しています。
面接が必須化されるから? 実はそこはあまり重要ではありません。