地方の新たな成功モデルとなっているIB認定校をどう見るか
前回の記事では、近年活躍目覚ましい市立札幌開成を取り上げました。
探究学習に本気で取り組み、国内トップクラスの実績を上げている地方の公立校。そこには、環境を整えれば都会の私立校に負けない教育実践が可能だという、希望が詰まっていました。
今回は、その続編です。
地方で着実に成果を出している学校は他にもあるのか。もしあるなら、どんな共通点があるのか。そして、学校を見極める際のポイントはどこにあるのか。
この問いを掘り下げていきたいと思います。
注目している地方4校
早速、名前を挙げていきましょう。
今回取り上げたいのは、以下の4校。
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広島叡智学園(広島・公立)
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水都国際(大阪・公立)
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立命館宇治(京都・私立)
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茗溪学園(茨城・私立)
それぞれ非常に特徴のある学校です。個人的に注目しているポイントをサクッとお伝えしていきます。
1. 広島叡智学園(広島・公立)|圧倒的な海外進学実績
まずは、広島叡智学園。
広島にある公立中高一貫校で、今年度、全国で最も注目された学校のひとつと言っても過言ではありません。
2025年春に卒業した1期生45名の卒業生のうち、海外大学の合格者数が105名。実際の進学者が18名。新設校にもかかわらず、学年の4割が海外進学を実現したというのは驚愕です。
正直、海外大学は合格者数だけなら実績を出すのはそう難しいことではありません。たくさん受けることができますから。でも、進学者数となると話は別です。広島叡智学園はそこでも素晴らしい実績を出しています。
その裏側には、奨学金財団に採用された生徒が多いという点があります。大型財団に7名が採用。1つの学校、しかも、45名しか卒業生がいない中で7名というのは、厳しい倍率を考えると信じがたい数字です。
海外だけではありません。国内大学の進学実績もとても良く、旧帝大および国立の医学部に合計7名合格者を出しています。
初年度でこの成果。私も本当にびっくりしました。
※学校公式サイトに掲載されている数字は2025/4/30現在のもの。その後のインタビューなどにより、海外大学合格者数は105名、国内大学合格者数は76名とされています。
2. 水都国際(大阪・公立)|“公設民営”という新モデル
2番目は、大阪にある水都国際。
まだ新しい学校です。2019年に開校し、生徒がフルに揃ったのが2024年度なので、そこからまだ1年半ですね。
この学校のおもしろい点は、設立の経緯です。
「国際系の公立中高一貫を作りたい」。
そう考えた大阪市でしたが、運営のノウハウがない。そこで国家戦略特区制度を活用し、運営は民間に委託、全国初の“公設民営”の併設型中高一貫校としてスタートしました(現在は大阪府に移管され、府立となっています)。
なぜこちらの学校に注目しているかというと、昨年の春、国際教育フェアというイベントの大阪会場ですごい行列ができたらしいんです。学校ブースの前に。
理由は様々あるのでしょうが、生徒がフルに揃ったタイミングで出てきた大学合格実績が予想を超えていたのかもしれません。
いずれにしても、関西ではとても注目が集まっているようです。
こちらも海外志向の強い学校で、海外大学合格者数を増やしつつある学校です。
3. 立命館宇治(京都・私立)|審査員が大絶賛した元SGH校
3校目は、京都にある立命館宇治。
こちらをチェックするようになったきっかけは、6年ほど前にありました。
みなさん、スーパーグローバルハイスクール(SGH)ってご存知ですか? スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の国際版のようなものです。今はWWLという別の事業に発展的に吸収されつつあるところですが、立命館宇治は当時、SGH採用校のひとつでした。
指定期間が終わる際、企画評価会議により事後評価が行われ、立命館宇治は最高ランクの評価を得ました。それだけではありません。講評の中で審査員の先生方が大絶賛されていたのです。
ポイントは2つ。
1つ目は、海外から受け入れた外国人の生徒と異文化が交流する土壌を形成し、その中で一緒にプロジェクト型の授業をやっているという点。今聞くと、そんな珍しいことかな?と思われるかもしれませんが、2019-2020年の時期にすでに実践していたという、その先進性です。
2つ目は、意欲のある若い先生がリーダーシップを取り、それを学校全体で支えている。その体制を整えていることが高く評価できる、と書かれてあったのです。
講評の締めの一文は以下の通りです。
同校の高く評価される点は,教師の成長を生徒の成長と同等に重視しているところにあり,本事業全体の発展を根底で支え,自覚的に推し進めてきたマネジメント力の賜物でもあると評価できる
…すごくないですか!?
国際系の学校と言いますと、東京だと広尾学園や渋谷教育学園渋谷が頭抜けた存在になっていますが、関西のそうしたリーダー的な位置にいるのが立命館宇治だと私は思っています。
2026年の4月には新しい寮もできます。
ちょうど私立高校の授業料実質無償化が全国展開されます。関西圏だけでなく他の地域からも進学者が増えてもおかしくありません。
4. 茗溪学園(茨城・私立)|日能研出身の校長補佐が仕掛ける改革
最後は茗溪学園です。茨城にある私立の学校になります。
元々国際系に強い学校でしたが、注目すべきは、校長補佐として昨年就任された井上修さんの存在。
みなさん、日能研ってご存知ですよね?
日能研には中学受験雑誌『進学レーダー』という雑誌がありまして、井上さんはそこで10年以上、名物編集長をしていました。入試情報室室長でもあったんですよ。
その井上さんが、昨年、茗溪学園の校長補佐に抜擢され話題となりました。
以来、その動きをウォッチさせてもらってるんですが、様々な大学や外部機関と教育連携を精力的に仕掛けていることがわかります。
同時に、昨年、新しくできた International Education Lab (IEL) という教育系シンクタンクの上席研究員でもありまして、国内外の国際教育事情に精通されています。
そうした幅広い知見は、茗溪学園の進路指導にも生かされているようです。
まだ表に出ていないようですが、今年の受験においても、アメリカの超一流大学に合格者を出したという情報が入ってきていますし、国内では、国公立大医学部のIB特別入試枠で合格者を複数人出したという話も聞いています。
茨城のつくばは土地もいいですからね。教育熱の高いご家庭がたくさんいます。この先も実績を伸ばしてくるだろうなと予想しています。
4校に共通する「ある特徴」
さて、個人的注目校として4校、ご紹介してきました。
読んでお分かりの通り、学校の場所も、公立か私立かという設置形態も、さらに言うと設立の背景も、全部バラバラなんです。都会にあるいわゆる名門進学校とはちょっと趣が違います。
でも、この紹介した4校には、はっきりした共通点があるんです。
勘のいい方はお気づきかもしれませんね。
そうです。今回ご紹介した4校は、すべて国際バカロレア(IB)認定校になります。
前回紹介した市立札幌開成もIB認定校でした。
IBがなぜ最近注目され、成果につながっているのか。この点については、前回の記事で触れましたのでここでは詳しい説明は控えます。超簡単に言うと、国際と探究(場合によっては、ここにSTEAMなども入りますが)、その掛け合わせをワンストップでつくれるという点が重宝されているのかなと思います。
おまけに国としても今、積極的に推進してますからね。そういう意味では、“お墨付き”と言いましょうか、「それなら大丈夫そうだ」という安心感にもつながっているのかもしれません。
実際に、こうして成果を出している学校も増えてますしね。
IBコース=特進クラスという側面
国際バカロレア(IB)が素晴らしい教育カリキュラムであることに疑いの余地はありません。
ただ、今日は、ちょっと違う角度から切り込んでみたいと思います。
そして、ここから先が、今日の本題というか、伝えたいところになります。
国際バカロレア(IB)は、その理念を見ると、多様性に探究的学び、そして全人格教育と、非常によく練られたものだとわかります。
しかしながら、日本の現場で、特に地方のIB認定校で起きていることを見てみると、違った側面も見えてきます。