探究最強!市立札幌開成の「三層構造」とは

地方の公立でもここまで伸びる。市立札幌開成の探究を支える仕組みを紐解く。
knockout 2026.01.26
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突然ですが、私は自分のことを勝手に「探究学習ウォッチャー」だと思っています。

2020年の教育改革で探究学習が学校カリキュラムに大々的に組み込まれる方針が決まって以来、できるだけ幅広く、このテーマをウォッチするよう心がけてきました。

そして、探究ウォッチャー的に言うと、毎年11月~12月は実に心躍るシーズンです。

なぜなら、この時期は、いろんな探究コンテストの結果が続々と出てくるからです。

最近、学校説明会に行くと、どの学校も、探究、探究、探究、、、猫も杓子も「探究学習やってます」とアピールしていますよね。少し前の流行りといえば、グローバルや国際交流でしたが、2020年以降は、探究学習一色。

どの学校も、それぞれの教育理念にのっとって実践を重ねているものと思いますが、一方でこうも思うのです。

「ガチでやっている学校は、ちゃんと成果を出しているはずでは?」

もちろん、コンテストで賞を取ることだけが、探究学習が充実していることのエビデンスではありません。探究は賞を取るためにやるものではありませんし、そのプロセスこそが重要な学びです。結果だけを見るのは一面的すぎます。

とはいえ、外から見えるひとつの指標として、コンテストの結果を見ることにも意味はあるんじゃないか?とも考えています。

そこで私は年末のコンテスト結果をチェックし、どんな学校がどういう実績を出しているのかを確認するようにしているのです。

JSEC 2025 での驚きの発見


冬休みに JSEC 2025 の受賞結果をチェックしていたときのことです。

驚くべき発見がありました。

「文部科学大臣賞」「科学技術政策担当大臣賞」。この2つの賞を、どちらも北海道の市立札幌開成中等教育学校の生徒が獲得していたのです。

この2つの賞は、JSEC のグランドアワードと呼ばれる最高賞クラス3つのうちの2つ。それを、ひとつの学校の生徒が独占している。にわかには信じがたい快挙です。

さらに言えば、科学技術政策担当大臣賞を受賞した生徒さんは、別のコンテストであるサイエンスカンファレンスでも、最優秀賞である文部科学大臣賞を獲得していました。

文句なしの実績と言えるでしょう。

理系探究コンテストの位置づけを整理する

聞き慣れない固有名詞がいくつも出てきましたので、ここで少し整理しておきましょう。いまお伝えした JSEC やサイエンスカンファレンスとは何なのか。簡単に解説します。

◆JSEC (高校生・高専生科学技術チャレンジ)

まず、JSECです。正式名称は「高校生・高専生科学技術チャレンジ」

イメージとしては高校生・高専生の自由研究コンテストですが、研究や技術開発に重点を置いた内容で、国内トップレベルのコンテストのひとつです。朝日新聞とテレビ朝日が主催しています。

◆日本学生科学賞

もうひとつ、国内トップレベルのコンテストとして「日本学生科学賞」があります。

こちらも理系の研究寄りのコンテストで、JSEC と並んで国内最高峰と言っていいでしょう。こちらは読売新聞が主催しています(このあたりの構図も日本らしくて興味深いところです。)

◆ISEF(リジェネロン国際学生科学技術フェア)

JSEC と日本学生科学賞、これら2つのコンテストで優秀な賞を取った生徒は、毎年アメリカで開催されている ISEF に派遣されます。ISEF とは「リジェネロン国際学生科学技術フェア」。いわば探究学習の世界大会です。

世界一を決める大会であるこの ISEF に直結しているコンテストが、JSEC と日本学生科学賞の2つなのです。

◆サイエンスカンファレンス

国内トップレベルとしては、さらにいくつかコンテストがあります。そのうちのひとつが「サイエンスカンファレンス」

文科省所管の独立行政法人である科学技術振興機構(JST)。そのJSTを中心に実施している次世代人材育成事業のなかで優れた実績を収めた生徒が、成果発表を競うコンテストです。

JSTの次世代人材育成事業には、小中学生向けの「ジュニアドクター育成塾」、高校生向けの「グローバルサイエンスキャンパス」があります。現在、これらは「次世代科学技術チャレンジプログラム(通称:STELLA)」という事業に統合されつつあります。

全国にちらばるこれら事業の実施機関から、優秀な探究をしている生徒たちが集まって競う大会が、サイエンスカンファレンス、という位置づけです。

◆SSH生徒研究発表会

最後に、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校を対象としたSSH生徒研究発表会もあります。

SSH指定校、ならびに、過去に指定経験のある学校が参加する科学コンテストで、令和7年度は238校が参加したとされています。研究に強い学校がたがいに切磋琢磨することを目的としたコンテストです。

***

以上、研究系・理系アカデミック系の代表的なコンテストを4つご紹介しました。

誤解のないように付け加えておきますと、探究活動には本当にさまざまな種類があります。

地域探究もあれば、グローバル系、アントレプレナーシップ系、ものづくり系など実に多様です。

探究活動の最高峰=理系研究という話ではありません

今回は、その中でも、理系の探究コンテストに絞ってご紹介をしているということです。

単年度の成果ではない、継続する快挙


さて、ここからが今回の本題です。

JSEC 2025 で、市立札幌開成の生徒がグランドアワード3つのうち2つを獲得しました。これは非常にインパクトの大きい出来事です。

しかし、いちばんお伝えしたいのは、いったいなぜそんなことが起きているのかという点です。

国内には理系探究を積極的に推進する SSH 指定校(および過去の指定校)だけでも300校以上あります。にもかかわらず、ひとつの学校に優秀者が偏っている。なぜなのでしょう?

3年前の JSEC 2022でも

実は、3年前の JSEC 2022でも、同校の田中翔大さんが文部科学大臣賞を受賞しています。

翌2023年、田中さんは、ISEF (リジェネロン国際学生科学技術フェア)に日本代表として派遣され、物理学・天文学部門で3等を受賞。さらにアメリカ音響学会賞で1等を受賞というダブル受賞の快挙を達成。そうした実績をもとに、現在は米スタンフォード大学に在学されています。

つまり、今回の JSEC 2025は、市立札幌開成にとって「たまたまの当たり年」ではありません。何年も断続的に結果を出し続けているのです。

これは明らかに、学校の側に生徒を伸ばす仕組みがあることを示唆しています。そんなに頻繁に日本一を取り続けるのは、ただの偶然では説明がつきません。

そこで、本記事では、市立札幌開成を事例に、強い学校をつくる仕掛けを読み解いていきます。地方の公立校だからわが家には関係ない、、、と終わらせず、これからの時代に強い学校を見分ける際の参考資料として読んでいただけたらと思います。

市立札幌開成の「三層構造」


では、市立札幌開成とはどんな学校なのでしょう?

調べてみたところ、やはり構造的な仕組みがあることに気づきました。

私なりに整理すると、三層構造になっています。

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