世界大学ランキングを批判して終わることの危うさ

世界大学ランキングは、正しいかどうかだけでは語れません。ビザや進学、国際キャリアに影響する通行証としての現実を、保護者目線で読み解きます。
knockout 2026.06.29
誰でも


6月18日、QS世界大学ランキング2027年度版が発表されました。

今年も1位はMIT(マサチューセッツ工科大学)で、なんと15年連続のトップです。2位タイはインペリアル・カレッジ・ロンドンとスタンフォード大学。上位10校のうちアメリカとイギリスの大学が4校ずつを占め、10位にシンガポール国立大学が入っています。そして11〜14位には、アジアから香港、シンガポール、中国の大学が並んでいます。QS社もコメントしているように、東アジアと中東の大学の台頭が明確な傾向として示されています

日本に目を向けると、東京大学が世界39位、京都大学64位、大阪大学95位、東京科学大学97位と、4校がトップ100入り。一方で、東大は4年連続で順位を下げており、京大も同様の傾向にあります。東北大学と名古屋大学はそれぞれ7〜8ランク上昇していますが、全体的な文脈のなかでどう読むべきか、悩ましいところです。

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ランキング批判は、なぜ毎回くり返されるのか


こうした世界大学ランキングが発表されるたびに、SNSには「こんな指標に意味があるのか」という声が湧き上がります。批判の論点は毎回だいたい決まっていて、おおむね次の3つです。

ひとつは、これは「教育力」ではなく「研究力」の評価だという指摘。主要なランキングの評価指標の多くは、論文の引用数など研究関連の項目、あるいは、学術研究界での評判で占められています。日本の大学は研究では見劣りするようになっているものの、実は教育力は高いのだ、という声は根強くあり、それはそれで一定の説得力があります。

ふたつめは、英語圏の大学が構造的に有利だという批判。論文も国際交流も英語で展開できる大学が評価されやすい設計になっているのは、確かにそうです。

そして3つめ。世界大学ランキングでよく引き合いに出されるものはQSを含め計3つあるのですが、今回最新版を発表したQS社はイギリスの会社。さらにもうひとつ、Times Higher Education(THE)もイギリス発。3つある主要ランキングのうち2つがイギリス系ということになります。イギリスは海外富裕層の留学生を積極的に呼び込む“ビジネス”が大学の収益基盤のひとつとなっており、自国学生と外国人留学生とでは学費が3〜5倍異なります。そうした“ビジネス”を後押しするために、世界大学ランキングを設計しているのではないか。そういう指摘は、当たらずとも遠からずと、私個人としては受け止めています。

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それでもランキングを無視できない理由


ただ残念ながら、だから無視すればいい、とはならないのです。

この世界大学ランキングは現実にさまざまな場面で「使われてしまっている」からです。

たとえばビザ。イギリスには「High Potential Individual Visa」という制度があります。就職先が決まっていなくても、ランキング上位校の卒業生であればイギリスに来て仕事を探していい、というものです。露骨な言い方をすれば、良い大学を出た人間なら歓迎するという移民政策の道具として世界大学ランキングが使われています。

似た仕組みは香港やシンガポール、オランダ、UAE等にも広がっていて、日本も「高度人材ポイント制」として優遇する制度のなかで同様のアプローチをとっています。

大学を評価するための指標として始まったはずの世界大学ランキングが、いつの間にか、国境を越えるための通行証のような機能を持ち始めている。それはもう、指標の正しさ/正しくなさとは別の次元の話です。

海外で働くことを視野に入れるなら、あるいは、海外大学院への進学を考えるなら。世界大学ランキングの順位を完全に無視することはできません。

ひとつ注意が必要なのは、日本国内の大学序列とグローバルな評価軸は、かなりの部分で一致しません。国内では圧倒的な知名度をもつ早慶も、世界ランキングでは国内での存在感ほど高く評価されるわけではありませんし、一橋大学のような特化型の名門校が比較的低い位置になることもある。そうしたギャップを知らずにいると、国際的な文脈でのキャリアや進学において、足をすくわれる可能性もあります。


日本の高等教育が世界の回路から外れていくリスク


もうひとつ、今回気になったことがあります。

私の記憶が正しければ、以前は、QSのランキング発表と同時に日本語のプレスリリースが出ていました。ランキング上位の結果とともに、QS社リサーチ部門のトップが、最新結果の概要や傾向と、日本の高等教育への評価を簡潔に説明したリリースです。さらに、日本の主要新聞社のWEBメディアでもほぼ同時に記事を出していました。ということはつまり、当時は日本に対して事前に広報的な対応がなされていた、ということを意味します。

それが今年はなかったのです。

理由はいくつか考えられます。AI翻訳の普及でローカライズのコストをかけなくなったのかもしれない。あるいはもっとシンプルに、日本市場をもうそこまで重要視しなくていい、と判断されたのかもしれません。

後者だとしたら、それはかなり深刻な話だと思っています。国内では「こんなランキングに意味はない」という声が高まり、海外からは「日本市場はもう気にしなくていい」と軽視される。その両方が重なっていくと、行き着く先はガラパゴスです。日本の大学・高等教育が、そしてそこから世界へ出ようとする若者たちが、国際的な評価と移動の回路から少しずつ外れていってしまいます。

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盲信せず、無視もせず、戦略的に読む


では、私たちはこのランキングとどう付き合っていけばいいのでしょう。

盲信する必要はないと思っています。一方で、ただ批判して終わることも良くない。

大学側には、指標をうまくハックしてほしい。ランキングの構造を理解したうえで、自分たちの強みと重ねながら戦略的に動くこと。それは可能なはずです。

子どもの進路を考える保護者の立場から言えば、「この大学は世界大学ランキングに入っていないから…」と絶対的な判断材料にする必要はないと思っています。ただ、視界の隅にちょっとだけ置いておくことは、特に留学、海外大学院進学、国際的なキャリアを少しでも視野に入れる場合には、あってもいいかもしれません。

通行証の存在を知っておくことと、通行証に人生を委ねることは、まったく別の話です。

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※ この記事は、2026年6月23日の Voicy「#388 世界大学ランキングは正しくなくても、人生に影響してしまう」を元に構成したものです。 

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