筑波大学の「20%」が気になる

ほとんど話題になっていない「国際競争力けん引学部等」。筑波大・広島大の動きから、大学の学生構成がどう変わり、その変化が家庭の進路選択や大学の今後に何をもたらすのかを考えます。
knockout 2026.09.14
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8月26日、文部科学省が「国際競争力けん引学部等」の第2回認定結果を発表しました。

……と書いても、たぶんほとんどの人はピンとこないと思います。

まず、名前からして何をする制度なのか全然わからない!

だからでしょうか、私としてはかなり気になったニュースなのですが、世の中的には驚くほど話題になっていません。反応しているのは相当な教育政策マニアくらいです。

ただこれ、数年後の大学キャンパスにいる学生の顔ぶれをじわじわ変えるかもしれないと予想しています。

とくに、「子どもがまだ小さくて、大学進学時には国際的な環境で学んでほしい。でも、海外大学に行くことまでは想定していない」という家庭には、少し頭の片隅に置いておいてもいい話だと思っています。

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大学は、外国人留学生を好きなだけ増やせない


「国際競争力けん引学部等」。
この制度を理解するには、まず日本の大学の定員管理の話から入る必要があります。

大学には学部ごとに定員があり、足りなすぎても、超えすぎても問題になります。人気大学だからといって、合格者をどんどん増やしていいわけではありません。考えてみれば当然で、人気大学だけが学生を大量に集めれば、その影響を受ける大学も出てくるからです。教員数や施設とのバランスも考えなくてはなりません。


ところが、ここに昨今のトレンドとのちょっとした矛盾がうまれます。

大学としては、外国人留学生を受け入れてキャンパスを国際化したい。キャンパスの多様化は学び舎としての質を高めますし、国際化指標が高まれば世界大学ランキングでも順位向上が期待できます。しかし、定員の枠が固定されている以上、外国人留学生をたくさん受け入れたら、そのぶん国内生を減らさなければなりません。人気が高く、志願者の多い大学が「日本人の合格者を減らして、そのぶん留学生を増やします」と簡単に言えるかというと、そう簡単ではありません。そんなことをしたら集中砲火で火だるまになります。


そこでつくられたのが、この「国際競争力けん引学部等」という認定制度です。

外国人留学生の受け入れ体制や教育研究環境など、一定の要件を満たした大学の学部については、通常の定員よりも多く留学生を受け入れられるようになります。乱暴に言えば、留学生を増やしたい大学(学部)が動きやすくなる制度です。

制度名だけを見ていると地味なのですが、けっこう影響が大きいです。そして、おもしろいのはここからです。

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2回とも、同じ3大学だった


2026年2月の第1回では、3大学11学部等。
2026年8月の第2回は、3大学10学部等が認定されました。

注目すべきポイントは、認定された3つの大学は2回とも同じであったという点です。

東北大学、筑波大学、広島大学の3大学です。


東北大学は、国際卓越研究大学の第1号でもあり、理系学部を中心に国際競争力を高めていこうという方向は比較的見えやすい。

私が気になったのは、筑波大学と広島大学でした。

筑波大は第1回で、人文・文化、社会・国際、人間、生命環境、体育、芸術などが認定され、第2回で理工と情報が加わりました。広島大も、理学、生物生産、総合科学に加えて、文学、教育、法、経済、工、情報科学まで対象が広がっています。

いわゆる国際系学部だけでもなければ、理系学部だけでもありません。人文科学系も、社会科学系も対象になっている。筑波大に関しては、体育や芸術といった専門学部(学群)まで入っています。

簡単に言うと、国として定員抑制領域となっている医歯薬以外は全部対象。

まさに大学全体といってもいいくらい、かなり広い範囲で、学生の構成そのものを変えようとしているように見えます。

昨今注目されている、大学の一部の学部やコースで英語学位プログラムを開設する動きとは、この点において質が異なると言えるでしょう。


「海外大か、国内大か」ではなくなるかもしれない


もちろん認定されたからといって、来年からキャンパスがいきなり国際化するわけではありません。

制度上、外国人留学生を増やせることと、実際に増えることは別問題です。魅力的な大学として認めてもらえるか。英語での情報発信や入試、住居、生活支援、卒業後の進路まで含めて評価されるか。留学生側だって世界中の大学を比較して進学先を決めます。

ただ、増やそうと思ったときに、増やすことができるようになった。
私はこの事実をけっこう重く見ています。


国際的な学びというと、これまでは、海外大学に行くか、日本の大学の国際系学部や英語学位プログラムに入るか、というイメージが強かったと思います。

でも、もし普通の学部、普通の授業、研究室やサークルの中に、いろいろな国から来た学生がいる状態が少しずつ当たり前になっていくなら、選択肢は変わります。

海外大か国内大か、ではなく、国内にいながら学生構成そのものが国際的な大学で学ぶ。

そんな選択肢が、今よりもう少し現実味を持つかもしれません。

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国際教育の「出口」を考えると、気になる


ここ数年、中高では「国際」を掲げる学校やコースがかなり増えました。英語教育を強化した学校や、海外交流を充実させる学校。“ほぼインター”というインターナショナルスクールに近い学習環境をつくる学校もあります。

ただ、保護者目線で見ていると、引っかかりを感じることがあります。
その先はどうするんだろう、と。

海外大学は授業料も生活費も高い。奨学金という選択肢はありますが、当然ながら全員が取れるわけではありません。一方、早稲田・国際教養(SILS)をはじめとした国内の人気国際系学部も、いまやかなり狭き門です。

中高段階では国際的な学びの選択肢が増えているのに、大学進学のところで急に出口が狭くなる。そんな感覚を持つ家庭は、これから増えるのではないでしょうか。


国際競争力けん引学部等の制度によって、今すぐ何かが変わるわけではありませんが、この制度がどこまで使われ、実際にどんな国・地域から学生が増えるのか。教室や研究室の風景は変わるのか。そして、そのとき日本の高校生にとって、その大学はどんな場所に見えるのか。

筑波大や広島大の取り組みは大きな試金石になると思っています。

この2大学の動き次第では、他大学にも影響が波及していくかもしれません。


大学選びは、偏差値や学部名だけで決まるものではありません。

誰と、どのように学ぶのか

そのことの意味は、年々大きくなりつつあります。

筑波大と広島大の動向を、しばらく注視したいと思っています。

***


さて、ここまで読んでいただくと、「国内大学でも国際的な環境で学ぶ」という選択肢が少しずつ広がっている、という話に見えるかもしれません。

ただ、この制度を数字まで追っていくと、もう少し違う景色が見えてきます。

実際にどこまで留学生を増やせる余地があり、どの水準を目標としているのか。もしその目標が実現したら、キャンパスでの学び方や過ごし方、そして私たちが大学を選ぶときの見方はどう変わるのか。

ここからは筑波大学にフォーカスを当て、もう少し具体的に近未来を予想してみます。

鍵になるのは、筑波大学が掲げる「20%」という数字です。

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