高専が次世代型へ!国が進める3つの変化

子どもを高専に通わせる親として思う、社会の期待の高まりと、現場が抱える「不安」のギャップについて。文科省の改革骨子案を読みながら考えたこと。
knockout 2026.08.10
誰でも

「高専ってどうですか?」

最近、いろんな方にお会いするたびによく聞かれます。

年々、社会的な注目が集まっていますし、うちは次男が地方の高専に通っているので、実際に子どもを通わせている親の生の声を聞きたい、ということなのかもしれません。

私個人の受け止めを先に言っておくと、高専、間違いなくいいと思っています。

やりたいことがはっきりしていて、それがテック系だったり、何かにはまりやすいタイプの子には、もうピタッとフィットする教育機関です。カリキュラム自体がかなり尖ったものになっていますし、学生の自由度も大学生に近い。「やりたいことをとことん」というタイプの子には本当に合います。「子どもが中学までは学校が合わなかったが、高専に入ってからは水を得た魚のように学校好きになった」という親御さんもいるほどです。

活躍の場も広がっています。ロボコンやプロコン(プログラミングコンテスト)に加え、最近ではDCON(ディープラーニングコンテスト)という、AIを使ったプロダクト開発から事業化まで挑戦できる場も熱を帯びています。


一方で、これもよく言われることですが、高専は悪い意味でも、合う合わないがはっきり出ます。カリキュラムだけでなく、クセの強い人が多いというのは、OBの方々を見ていても確かに感じるところ。進級できずに留年したり、卒業にいたらないまま退学になる学生も、普通の高校に比べたら何倍もいるんじゃないかと思います。誰にでも気軽におすすめできる場所ではない、人を選ぶ教育機関だということは確実に言えます。

とはいえ、社会的な期待は本当に高まっていますし、国をあげて理系人材・高専人材を増やそうという気運になっていることも追い風となっています。国の高等教育政策を審議する中央教育審議会の大学分科会では高専の機能強化について議論が進んでおり、さらに、これと連動するかたちで「高等専門学校の機能強化に関する検討会」が文科省にも設置されています。そして先日、その検討会で「中間整理の骨子案」が示されました。

今回はこれを取り上げてみたいと思います。

***


改革の3本の柱


骨子案で検討されているのは大きく3つです。

1. 量的拡大

高専自体の数を増やしていこうという方針です。今はテクノロジー領域、いわゆる工学系分野に偏っていますが、今後は農業やコンテンツ分野など学科の幅を広げていく考えのようです。

また数年後にはいくつかの高専新設も予定されています。2028年度には滋賀県立高専、翌2029年度には愛知県立高専(愛知総合工科高校に併設)、さらに福岡にも市立高専ができる計画です。高専はそのほとんどが国立なのですが、上記3校は公立高専。地元のインフラを支える人材育成機関として、地域からも期待されているということが、ここからも見えてきます。

2. 質的向上

国立中心ゆえに校舎や設備が古びていたりする実情もあるようで、国からの運営費交付金を増やして設備を充実させる。あわせて教員の確保も強化していく、という方針です。

3. 高専卒業者の国際通用性の確保

私が一番重要だと思っているポイントです。

高専は5年制で、この5年間で終える教育課程を「本科」と呼びます(※注:さらに突き詰めたい人向けに2年の「専攻科」もあります。5年+2年で合わせて7年となり、高校3年+大学4年相当になります)。本科を卒業すると「準学士」という称号が与えられます。ただし、これは大学の「学士」や短大の「短期大学士」のような学位ではありません。

これが結構、根深い問題でした。高専の5年間は、勉強する期間としては、高校3年+大学2年の短期大学と同じ。しかしながら、短大卒業生がもらえる「短期大学士」は国際的に通用する学位である一方、高専の「準学士」はそうではない。国内で就職する分にはそれでも実害は少ないのですが、問題は海外に出るときです。確かな技術を持っているはずなのに、学位を持っていないことでビザの壁にぶつかる、というケースがあったわけです。

海外大学への編入でも同様で、本来なら大学2〜3年次への編入ができてもよさそうなものの、それができずに高卒扱いとなり、改めて大学受験をしなければならないケースも少なくありません。大学と個別に交渉をすれば道が開けることもあるらしいのですが、これがとにかく手間のかかる手続きなのだそうです。

高専という教育制度自体は世界に広がりつつあり、技術力の高さは海外でも知られるようになってきている一方、この学位の問題が大きなネックになっていました。ここが改善され、高専本科の卒業者にも国際的に通用する学位が授与されるようになったら、これはかなり大きな変化だと思います。

骨子案では、留学制度の後押しについても言及があり、今後、たとえばトビタテ!のような留学プログラムに高専生向けの枠が新設される、といった動きも出てくるかもしれません(あくまで個人的な予想です)。

足元の課題は「不安」


社会からの期待は高まり、国としても力を入れていく気持ちは満々なのですが、足元の状況は必ずしも順風満帆とは言えません。高専全体で見ればまだ1.44倍の志願倍率がありますが、一部の高専ではすでに定員割れが起きていますし、人気のない学科の定員確保に苦労しているところもあります。

理由はいろいろあると思いますが、個人的に最大のボトルネックだと感じているのは、受験生や保護者の心理的な不安です。

15歳の時点で、合う合わないがはっきり出る進路を前にしたとき、躊躇する人は少なくないはず。入ってみて合わなかったらどうなるのか、途中で興味が変わったら方向転換できるのか。そのように考えてしまうのは、仕方のないことだと思います。

高専の魅力を高めるためのプラスの施策も大事ですが、同時に、合わなかったらやり直せる現実的なルートを用意しないと、志願者は増えていかないんじゃないかと想像しています。たとえば高専で合わなかったら普通高校にそのままスライドできる、といった制度を整えていく必要があるのかもしれません。

実際、今回の骨子案にも「セーフティネットの整備など高専進学に対するリスク認識の低減」が盛り込まれています。高専の魅力を伝えるだけでなく、「もし合わなかったとしてもやり直せる」と思える仕組みをつくることも、志願者を増やすうえでは重要だと国も見ているわけです。


こうした制度面をどう整えるかは、正直、私個人にできることはほとんどなく、文科省や学校関係者、大学関係者の方々に頑張っていただくしかない部分です。ただ、個人としてできることも何かあるはず、とは思っています。

たとえば小さい子どもたちに「ものを作るって楽しい」「実験するって面白い」「誰かが作ったもので遊ぶだけじゃなく自分も作る側に回ってみたい」と思えるような体験を提供できたとしたら、高専のような専門性の高い進路を目指す子どもがもっと増えるのではないでしょうか。

合う合わないがはっきりした進路で若干怖いけど、それでも、好きだから一丁やってみるか。そんな風に思える子どもが増えたらいいなと。不安をゼロにするのは難しいですが、それを上回るくらいの好奇心を育てることができれば、後押しにはなるはずです。

子どもたちがSTEAM分野の楽しさを感じられる場づくり

これはもっとやっていきたいし、増やしていきたいと思っています。同じ志の方がいましたら、ぜひ一緒に取り組んでいきましょう!

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※ この記事は、2026年8月4日の Voicy「#390 高専が次世代型へ!国が進める3つの変化」をもとに構成したものです。 

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